こんな夢をみた。
水兵の手に拠って 嵐の海に投げ捨てられた五歳の子供程もある美少女人形。
嵐が止まないのは 此の悪魔の人形のせいだと言って 水兵は D の部屋からフランシーヌを盗み出し投げ捨てる。
人形は ゆっくりと水底に落ちていく。
馬鹿みたいだと呟いて。
人形の心はとても小さい たった一人の人の事しか思い描く事ができないのにと。
D の事で心は一杯で 誰かを呪うほど余裕はないのにと…
そして 人形は歩き出す 愛する D の元へ帰る為に あらゆることを利用して。
此れは寝苦しい 一時の眠りが見せた泡沫だよな
マンションの前のゴミ集積場にあった人形の瞳 同じ綺麗な海の色をしていた。
こんな夢をみた。
寂寥とした砂の海を歩いている 何処までも…
ふっと気付く 何の感情も 感覚もなく 唯黙々と歩いている。
そうだ 私は 全身麻酔をかけられて 手術中の筈で…
私は常々 全身麻酔とは 人工的に作られた仮死 いや 死其の物だと考えていた。
落ちてしまう前の一瞬の恍惚 止まる呼吸 止まる時間。
それなのに 何故 私は夢を見ているのか。
振り返ると 砂の海が掻き消される様に真っ白に消えている まるで データーを消去したかのように。
消えていく
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