FC2ブログ

百鬼夜行に遅刻しました

 オリジナルの小説を中心に 偶にゲーム 時々映画 稀にミステリー 膝には猫で お送りしたい所存です。

苔色の手帳  

P7120025.jpg


まぁ… 何というのか よく解らなくなってしまいました…

今回は緑です 下記からどうぞ。
 


   苔色の手帳

 私は 彼を愛していた 彼だけを愛していた でも 彼を無邪気に信じる事は出来なかった。
彼はピーターパンで 私はウェンディーで… ネバーランドには住めなかった。

「一緒に 住まないか。」
プロポーズとも とれる言葉を 彼は満面の笑顔で口にし 私の手を握り締め そして 私を抱き締める。
「何時も 一緒にいたいんだよ。」
甘く甘く 砂糖菓子の様な言葉に 私の心は燃え上がる事なく ひんやりと冷えていた。

彼は 形ばかりの作家で そう 一応は出版されているらしいのだが 書店で彼の本を見かける事はなかった。
定期的な収入はなく 貯金もない どのように生活を組み立てる積りなのか。
彼の言葉は いえ 彼の書くモノを含めすべてが おままごとの様で 私は彼の母になるつもりはなくて…
私は 私を抱き締めてくる彼の両手を 邪険に振り払って 言葉を放った。

「大人になって」 と

私は 彼に苔色の手帳を贈った 最後のプレゼントにするつもりで
オーダーメイドで手帳を受け付けている工房に出向き 革の色を選び 紙質を選び…

深い深い緑色が しっとりと水分を含んだかのような落ち着いた色合いが美しい なめらかな革表紙
乳白色の 柔らかい紙 そして 桜色の栞紐。
私は 終わりにするつもりだった 終わりにすべきだった。 

彼は… 何時ものように満面の笑顔を浮かべて 仕事に就いたから ちゃんと仕事に就いたから一緒に暮らそうと
私の手をとり 私を両の手で抱き締める。
私は 恋人に抱き締められている時も 私の心は ひんやりと冷たくて 
私は心も体も 遂に熱を帯びる事を知らなかった。

彼は夫となっても変わらなかった 淡々と仕事をこなし 日々の糧を得て 
相も変わらず私を両の腕で抱き締めて 満面の笑顔で。

私は 別れを切り出そうとして 最後の贈り物とするつもりだった苔色の手帳を 結局 彼へ贈ったのだか
その手帳は 彼の本棚の片隅に埃を被り放置されていた。

私は 甘ったるい 昔彼が書いていた小説の様な 勇者や魔法使い 薔薇色の頬の姫 
時の止まった塔に そして 最後は必ずハッピーエンドと言った感じの 手垢のついた様な お決まりの御伽噺が
綴られているだろうと 其の手帳の頁を繰った。

手帳は 唯 陽の光にさらされて焼けて紙が変色しているだけで 何も何も 綴られていなかった。
私は ピーターパンを飛べない様に 引き摺り降ろしてしまったのだろうか。

私は そっと その手帳を本棚に戻した。   
スポンサーサイト



category: 色とモノ

コメント

こんばんは

「大人になって」って言葉は彼の魂にとっては「死んで」というのと同じだったのかもしれませんね。

でも、きっと、彼は別のノートに書いているんじゃないかな。そうじゃなかったら、変わらずにニコニコしていることなんてできないように思います。

URL | 八少女 夕 #9yMhI49k
2014/07/24 04:40 | edit

己の人生を選ぶか、それとも妥協を取るかは人生ですが。
それらを総じて、責任を背負うのが大人。
背負わずに生きていくのが子どもってことだと思います。

URL | LandM #-
2014/07/24 12:06 | edit

八少女 夕さん へ

 こんにちは。
そうですねーー 彼はまったく書かなくなったのか 其れとも 何処かで書いているのか…
彼女には見せないだけで 何処かで自分の世界を守っているのか。
彼女からの贈り物に書かないのは 抵抗や反抗なのか… それとも 大人になろうとしたのか…

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/07/24 18:06 | edit

LandMさん へ

 こんにちは。
含蓄のある言葉ですね。
どの様な人生も 自分が選んだのだからですね 選べる道は少なくとも 自分が選んだのだからでしょうか。
子供は 大人の選んだ道を歩いていますからね 自分で選ぶ=自分で責任を負えですね。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/07/24 18:11 | edit

07:12に拍手コメント頂いた方 へ

 こんにちは。
暑いですねーーー 凄く暑いですーーー。
また 暇な時にでもね。

拍手コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/07/24 18:24 | edit

どちらかというと、この「私」は少しばかり自分本位な人かな・・・と感じます。
きっと彼は、ちゃんとこの「私」を愛し、大人の責任を果たし、それなりに幸せに生きているんだと思うんです。
でも「私」は、自分が彼の人生を不幸にした、と、思い込んでる。
彼は「私」が思うほど子供ではないのに。ちゃんと大人になってる。
「私のせいよね、ごめんなさい」と思っているこの「私」の方が、もしかしたら大人になれないピーターパンなのかも……と。
そんな気がしました。
絶妙なモヤモヤ感が、すごいなあと感じました。この短編。
(きっと読む人によって、感想が違うんでしょうね^^)

URL | lime #GCA3nAmE
2014/07/24 18:38 | edit

lime さん へ

 こんばんは。
うん そうなんですよーー 此の女性 日々の糧を得る事が難しい 売れない作家状態の彼では不安で 嫌で でも 御伽噺を語らない真面目にコツコツと働く彼も 何か嫌で… 
彼女は 自分で解ってないのですが 自分勝手で 其の自分勝手さが 自分を不幸にしている。
でも 彼の方は コツコツと歩いているのですよ。

ああっーーそうでしょうね 読む方によって 彼の立場に立つか 彼女の立場から見るかによって 変わるでしょうね。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/07/24 19:10 | edit

わおー15才の少年がこのような「現実味」ある男女関係?綴るって有る意味凄いです。
そうですね・・主に女性は、「ハッピーエンド」な状態がずーーと続く事を(結婚してもですね)夢見ますが、結局は「現実」はこんな感じなんだろうな・・。
まー、私自体、結婚生活は極めて短かったからよくワカンナイけど・・。
でもでも、彼は真面目に生計立てているし、なんか平凡でワクワク感は無い毎日なんだけど、気が付いたら、彼との生活が「平和」だった・・・ってそのうち諦めというか何というか・・そんな感じに成って行くのかもしれませんね・・(笑)。

URL | ペチュニア #-
2014/07/25 06:51 | edit

ペチュニアさん へ

 こんばんは。
そうですねーー この最後で別れを考えるのではなく 何事も無かったかのように 手帳を本棚に戻すのが 如何にもありそうかな。
そう ワクワクはなくても 毎日イライラしていない 其れが結構 幸せだと…
うん 諦めではなく 平和に気付ければいいのだけどなぁ 此の女性 中々気づかないのかな。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/07/25 18:33 | edit

20:26に拍手コメント頂いた方 へ

 こんばんは。
うん この男性は好きな女性と一緒に暮らして 一緒にいて抱き締める事が出来る。
其れが この男性にとっては ハッピーな物語で 自分の人生が物語になってしまったから もう物語を書く必要ないのかな。
偶に 手帳を取り出して 物語を思い出しているのかな。

うん 花火いいですよねーー ひと夏に一回程度は 打ち上げ花火見たいなぁーー

拍手コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/07/25 18:38 | edit

う~む

ウゾさんって不思議な感性の持ち主でいらっしゃいますよね。
これを高校1年生が書くというのは、ほんとになんてことかしら。
観察眼や感性が同年代の人からは少しずれていて(失礼)、それがいい形で出ているのかもしれませんね。
歳をとったからって誰にでも書けるものじゃないですから。

でも、「彼」は「私」のためにだけに大人になったわけではないのかも、と思いました。彼が作家として上手くいっていたら、きっと辞めなかったんだろうし、自分の限界を悟った、という気がするのです。
残された真っ白の手帳は、彼にとって過去に描いていた夢の跡みたいなもので、マイナスなイメージじゃなくて、それでも心の中にある大事な思い出みたいなもの、なんじゃないかな。
過去を懐かしがって自分を憐れんでいるんじゃなくて、この「彼」、結構前向きというのか、足るを知る、というのか、「今」をちゃんと生きている気がするんですよね。
「彼」側の視点をぜひ知りたいと思いました。
……あ、ここまで書いて皆さんのコメントを読んで、limeさんと同じ意見だと判明。そうそう、これは彼がいつも笑顔でいるという表現から感じることなのかもしれません。
きっと彼の中では、手帳に書かなくても頭の中で別の世界が広がっているのではないかしら。作家にならなくても、そんな世界は自分で大事にできるから。

URL | 大海彩洋 #nLQskDKw
2014/07/27 07:22 | edit

私、
 本当にこんな手帳が欲しぃーーー

  >苔色の なめらかな革表紙
     乳白色の 柔らかい紙 そして 桜色の栞紐・・・

  それはそれは、もぉ完璧なー☆"

完璧な相棒を持つと、
 もぉ進化しなぃのかしらねーー;

 ダメンズ好きってのにも共通するのかしら。。。

URL | レイまま☆ #-
2014/07/28 14:09 | edit

大海彩洋さん へ

 こんばんは。
ずれてますか… 
僕は 極々真面目で面白味のない人物だと思っているのですが…
ずれている… 何か意外な感じがします。

うんきっと 普通の生活 普通の人生が彼の小説になったのかなぁ。
彼は夢をあきらめたのではなく 今追いかけている 唯夢が変わっただけ。
もう 言葉で小説を書く必要がないのかな。
まぁ 人生に満足してしまえるから 彼は小説家としては大成できなかったのかな。
彼の中では ハッピーな物語を歩んでいるのですよ 彼女は… かなり納得していないですが…

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/07/28 18:16 | edit

レイまま☆さん へ

 こんばんは。
そうそう 極上の手帳欲しいですよねーーーー
しっとりと水を含んだ 深い苔の色 蛍光色の白々した色ではなく 柔らかい白 そして 抑えた色の桜色。
此の手帳の色は 実は京都の寺の庭のイメージなのです。

うん… 何なのだろう… タメンズとまでいかなくても 女性って 少し危ない色気を持った 精神的に弱い男性に惹かれたりしますよね。
何故か 包容力があり大人でと言う男性よりも…

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/07/28 18:23 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://uzo242.blog.fc2.com/tb.php/1001-e6bc9547
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)