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百鬼夜行に遅刻しました

 オリジナルの小説を中心に 偶にゲーム 時々映画 稀にミステリー 膝には猫で お送りしたい所存です。

セピア色のエスプレッソコーヒー  

P9240021.jpg


色とモノシリーズ 今回はセピア色です。

下記からどうぞです。
 


     セピア色のエスプレッソコーヒー

 真紅のベルベット地の椅子に凭れ掛り 重い緞帳が静かに幕を開ける。
手には キャラメルソースのかかったポップコーンとエスプレッソコーヒー。
やがて 場内の照明が消え 非常口の灯が小さく瞬き。
私は この瞬間が愛おしくて 態々映画館に行かなくても 手軽に映画を楽しめる手段が多々あるのだか
其れでも 私は小さな映画館へ足繁く通っていた。

紗がかかったかのような フィルムに写し出される映像。
何気ないありふれた男女の 極々ありふれた人生と幸せ 取り立てる程の事柄はなにもなく。
唯 描き出される 極々普通の人々の 普通の微笑が美しくて…
ある程度の歳月を経ると解るのですよ 極々普通であることが 如何に難しいか 如何に得難く 行幸であるかと

そう 初めて本気で 純粋に愛した女性 後の妻との初めてのデートも 此の映画館だった。
分りもしないのに… 芸術性が高いと評判の小難しい映画を選び 背伸びをしてエスプレッソを飲み。
映画の内容は忘れてしまった いや 映画などほとんど 見ていなかった。
唯 暗闇に浮かび上がる 静かに彼女の頬をつたう 涙の美しさに 唯々見惚れていた。

そして 子供を初めて映画館に連れて来たのも 此の映画館だった。
美しい映像と 小さな大冒険 子供たちは 席から立ち上がらんばかりに興奮して
小さな手のひらを握り締め 主人公たちと一緒に冒険の旅に出て 小さな声で一緒に歌を歌っている。
仄かに香るエスプレッソの深い香りが心地よく 唯 子供たちの月よりも星よりも輝く その瞳が愛おしかった。

そして エンドロール。
私は 此の最後のエンドロールが静々と流れ 映画の常世から 此の現実の浮世へと 
ふわりっと浮き上がってくる感覚。
私は 此の感覚がしみじみと愛しているのだろうか…
手には 半分ほど口を付けたままのエスプレッソコーヒーが 冷めきっていて。
私は 何時も 白々と眩しく灯が点り 真っ白に 何も映し出さないスクリーンを見詰めて 
冷え切ったエスプレッソを飲み干し 紙コップを握り締める。
此れが 私の映画の世界から浮世へと帰る為の儀礼。


「もう いいのか」
後ろの席に陣取っていた男性が 小声で確認をとる。
「はい 連れて行ってください。」
私は震える手を 震える声音を抑え付ける。

「私が妻を そして 子供をこの手に懸け 殺しました。」
私は 冷めきったエスプレッソコーヒーをゆっくりと飲み干した。

  
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category: 色とモノ

コメント

お早う御座います。
だれもが懐かしさを覚えるような情景が見えるようです。
クラシック映画が似合う映画館。
愛する女性と行った思い出、小さな我が子を連れて行った思い出・・・・。

平凡で楽しそうな温かい家庭のぬくもり・・・。
そんな「予想」を裏切る結末。
「一体何が・・」
こんなはずじゃなかった・・っていう事が人生にはつきものなんです。
それにしても、なぜ・・。
懐かしくって悲しいです。残酷な結末です。

URL | ペチュニア #-
2014/10/04 07:23 | edit

ウゾさんらしい、渋いSSです。
そのまま淡々と、静かなモノローグで終わっても良かったのに、
最後にどんと来ました。
ドラマがスクリーンから客席に映った瞬間ですね。

なんか、どうしようもないことが起こってしまったんだなあと、想像させるお話。
ニュースで悲惨な事件を知らされると、凶悪な犯人像ばかり想像してしまうけど、どうしようもないことが根底にあったんだろうなと・・・。想っちゃいますね。

映画館。最近は時間が無くてほとんどDVDで鑑賞していますが、やっぱり映画館はいいですよね。

URL | lime #GCA3nAmE
2014/10/04 11:54 | edit

・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・ミステリー。
(*´ω`)

最後のどんでん返しが素晴らしいです。
コーヒーが吹き飛ぶぐらいのもので良かったです。

URL | LandM #-
2014/10/04 14:01 | edit

ペチュニアさん へ

 こんばんは。
そうですね 少し古い街の映画館 今時のチェーン店ではない。
封切館ではなく 少し遅れて話題の映画がきたりする そーゆー映画館。
映画館て 其れだけでワクワクしますからね。

そう 平凡って 普通って意外に難しかったりするのですよね。
人並みの幸せって 一つ一つ積み上げていかないと手に入らない 其れなのに簡単に崩れ去る。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/10/04 19:22 | edit

lime さん へ

 こんばんは。
うん 此のまま 静かに一人の男が映画と映画館への愛と思いでを語る。
そーゆー静かな話 いいですよね。

この話 実は最後の自首するシーンを思いついて 其処から書いたものなのですよ。
ある意味 テレビの二時間サスペンス劇場の最後のシーンの様だなぁと思いながら書きました。
映画館 いいですよねーー 特に チェーン店ではない 少し古びて趣味に走った様な作品をかけるような所。
いいなぁ 映画館。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/10/04 19:29 | edit

LandMさん へ

 こんばんは。
うん 蛇足になるかなぁーー 静かに幕を下ろす様な終わり方の方がいいかもなぁ… と思いつつも オチをつけてしまいました。
まぁ 偶には いいかなぁと言う事で!!!!

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/10/04 19:32 | edit

20:14に拍手コメント頂いた方 へ

 こんにちは。
うん 凄くありふれた風景なのですよね。
特別な幸福ではないけれど ああっーー幸せだななしみじみとするような感じの。
台風近付いてきたね 昼頃から不穏な天気だよ。
此方では 今日の夜から明日の朝が一番接近するようです。
今 妙に静かで… 一荒れする前の静けさかな…

拍手コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/10/05 16:27 | edit

08:58に拍手コメント頂いた方 へ

 こんにちは。
続きですかーー うん 書くと妙に長くなるのですよーー
一応 理由は考えてはいるのですが…
うん 書かない方がいいと思うので 書かないかな。

拍手コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/10/05 16:30 | edit

映画館の席に座りセピア色の世界に浸っていたら……
おお……驚きでした。

URL | 山西 サキ #0t8Ai07g
2014/10/05 21:15 | edit

山西 サキ さん へ

 おはよう御座います。
うん 綺麗に静かな回想だけで終わらした方がいいのだろうかと 悩んだのですが…
初めに考えたままの終わり方にしました。
まぁ 偶にはこーゆーモノもと言う事で!!!!

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/10/06 07:10 | edit

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