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百鬼夜行に遅刻しました

 オリジナルの小説を中心に 偶にゲーム 時々映画 稀にミステリー 膝には猫で お送りしたい所存です。

サクリファイスの 夢見た世界  

此の記事は 当分の間 トップに居座ります。
通常の記事は 此の記事の下から 始まります。

Stella 十二月号 参加作品 「サクリファイスの 夢見た世界」 です。

薄っすらと 薄暗い作品です。
いやぁーーーー すっごく題名付けるのに 時間が掛かった まったく思いつかない。
此の題名も 今一 納得していないのだか かといって いいものも 思いつかない。
悶々と 数日考えたのですが ダメでした。

興味のある方は 下記からどうぞ。


20120907215857248.jpg


 
    サクリファイスの 夢見た世界

 「幾度 御聞きになられても 同じ事しか 語れませんよ。
刑事さん、何ならば 其方に都合の良い様に 適当に 事件の概要を語りましょうか。」

淡々と 淡々と そして 理路整然と 其の人物は 事件に至るまでの道筋を語る。

「適当に辻褄を合わせた話をされても 意味を持たない。
もう一度 話してくれるか 親友の人工呼吸器を 外した理由を。」

私は 実に清明な頭脳が語る 狂った感情の話を 再び 求める。
理性が紡ぐ 優しさと 狂気 私には 理解出来なかった。

其の青年は 双眸を伏せ 言葉を紡ぐ 薄紫色の陰が頬におちる。 

 … 呪いを 解く為ですよ。

   僕は 僕の親友を 忘れたくなかった。

「僕の友人は 彼は… 眠り続けていました。
徐々に 徐々に 睡眠時間は長くなり やがて 眠りに落ちたまま 目覚める事無く眠り続ける。
彼は 此の世界を拒否して 夢に亡命した。

彼の 脳波は 夢を見続けていた。

原因不明 幾度となく 繰り返された 精密な検査に置いても 何等 異常を発見するに至らず
なすすべもなく 彼を 目覚めさせる事は出来なかった。
程なく 彼の眠りは 深く 深く 深淵を覗き込むに至り…
彼は 呼吸を拒否した。

人工呼吸器の装着。
人工呼吸器に拠り 彼は 身体を管理される事となる。


 … 僕と彼は 魂が似ていた 否 魂の欠けた形が似ていた

私は 其の言葉に 疑問を覚え 質問を口にする。

「君は 全てに於いて 恵まれたと言っていい 人物だ。
其れに対して 彼は 何一つ 持っていない 何処が 似ているのだ。」

其の双眸が 深く 一瞬 静かな憎しみ 哀しみ 否 諦観だろうか 
微かな感情に 揺れた。


 … 一番 欲しいモノは 手に入らない。

「僕も 本当に ずっと ずっと 彼が回復し 目覚めてくれる事を待っていたのですよ。
彼の人工呼吸器を 此の手で外した 僕の言葉では信憑性ないですが、ホントなのですよ。」

「ああっ 信じるよ。」

そう ベットに横たわり 何等反応のない彼の枕元で 毎日の様に 話し掛けていたと
多くの 看護婦や 入院患者から証言を得ている。       

「人工呼吸器を外す事は 死に繋がると解っているのだろう。 では 何故。」

ああっ まただ 其の双眸に 諦観が映し出される。

「彼が 僕の記憶の痕跡を消去しようと… 
ねぇ 刑事さん、御聞きになった事あるでしょう。
人の死には そのまま 肉体の物理的な死と 其の後に起こる 忘れ去られると言う 精神的な死とがある。
彼に付いて 一つ 一つ 記憶が抜け落ちていく 恰も 不完全なジグソーパズルの様に。

僕は 消え去ろうする彼にしがみ付き 人工呼吸器を付け 肉体を管理し
物理的に消え去る事を 許さなかった。
其の為 彼は 精神的に消え去ろうと…
自分の 生きた 生きている痕跡を 記憶を消し去ろうと。

彼の 呪いですよ。

そして 僕たちの記憶から消え去り 夢への亡命が叶った時 彼の呪いは成就する。

僕は 許せなかった。
彼が 此の世界を捨て去り 夢へと亡命する事を
僕の記憶から 消え去る事を 僕の中から 消え去る事を

だから 僕は 彼に物理的な死を与えた。
此れが 僕を捨て去ろうとした彼への 復讐 そして 祝福」

私には 彼の言葉の真意は 何一つ 掌から零れ落ちる 砂粒の様に サラサラと
何も 何も つかめなかった。

「君には 精神鑑定を受けてもらう事になるだろう。 ええっと… 名は…。」

「ユダですよ 僕の名は ユダ。
ええ 勿論 協力しますよ ねぇ 刑事さん、僕は 狂っているのですよ。」

限りなく怜悧な双眸が 私の目を正面から覗き込む。

私は 結局 何も 解っていなかった。
 

     
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category: ファンタジー

コメント

こんばんは。

夢の世界への亡命、か……
なにも持ってないと言われる人物だからこその選択だよね。
この世界に置いていくものが何一つないんだから、未練の持ちようもない……
そして、それゆえに置いていかれ、記憶さえも奪われるユダの苦しみ、といったところでしょうか。
殺すことでしか引き止められないのは悲しいことですが、一つの『後悔しない選択』だったかもしれないですね。

URL | 栗栖紗那 #T7ibFu9o
2012/11/25 18:41 | edit

こんばんは。

ウゾ様こんばんは。

読ませて頂き、ふと思ったことは、精神的な“死”を与える事が栗栖さんがコメントされている、忘れられないための一つの『後悔しない選択』だったとしても、復讐と祝福と言う言葉がある限り、ユダにとって親友の物理的な“死”も非物理的な精神的な“死”も、“死”であることには変わりなく、眠りに入った時点ですでに“死”であるのかなぁと。(脳波は夢を見ているから脳死ではないですよね?)

復讐と祝福はある意味表裏で、執着と手放しも表裏…。
ユダは彼を背負って生きて行くのかしら?それとも…。
難しいテーマを選ばれたなぁ、と驚愕です。凄いです。
深い物語を読ませて頂きありがとうございました。

URL | 高橋月子 #-
2012/11/25 19:44 | edit

栗栖 紗那 さん へ

 こんばんは。
まったく クリスマスにかすりもしない 物語になりましたーーーーー
敢て クリスマスにかするのは ユダと言う名前程度。
キリスト教のユダと 重なるような構成も考えたが 無理でした。

出来れば もう一歩踏み込んで 夢の世界に亡命できるほど 此の世界を憎悪している
其の負の感情を書こうかとも考えたのですが
流石に 人様の企画で書くには 暗すぎると…
既に 十分薄暗い話しだし…

ユダが狂っていると取るか 狂っていないと取るかに拠って 多少変わりますが
ユダが 唯一取れた選択なのでしょうね。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。  

URL | ウゾ #-
2012/11/25 20:12 | edit

高橋 月子 さん へ

 こんばんは。
ええ ユダにとって 彼に物理的な死を与えることは 彼を手に入れる
彼に付いての記憶を手放さない方法。
でも 此れは 彼の中に ユダはいないと認める様なモノ。
其の為 復讐であり祝福だと。

ええ 脳死を含む 病的な身体的なものによる眠りではなく 精神的な此の世界を拒否した為の眠り
其の為 夢への亡命と言っている。
肉体的な原因のある眠りであれば ユダも此処まで追い詰められなかったでしょうね。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。 

URL | ウゾ #-
2012/11/25 20:21 | edit

こんばんは。
読ませていただきました。

ユダという名前は裏切り者の記号? それともある大きな結果を成就されるためにもっとも嫌な役目を背負わされた者の哀しみへのオマージュ? そのどちらにもふさわしいのかもしれませんね。

自分から離れていく愛する者に対する非難と贈り物の両方の性格を備える行為が、彼にとっては「肉体的な死」を与えることだったのですね。

とても深いテーマです。刑事さんには簡単にわからないだろうし、わかっても調書に書くのは無理だろうなあ。

URL | 八少女 夕 #9yMhI49k
2012/11/26 01:16 | edit

八少女 夕 さん へ 

 おはよう御座います。
ええ 人様の企画に提出していいのだろうかと 言う様な薄暗い話です。
うーーん 以前 キリストを裏切るユダは 裏切る前は 一番キリストに心酔していて
一番熱心で… 何故 そんな奴が裏切ったのだろうと 実は 裏切っていないのでは無いだろうか…
キリストの計画の一環を担っただけなのかもなぁ…という類を考えみて
ユダは 一番愛していた者の記号かなぁ。

此の話 考えて作ったのではなく ふっとした思いつきなので… 理論的には説明できない箇所が
多々ありますが ユダの主観の話なので それでいいかなと思っています。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2012/11/26 05:53 | edit

こんにちは

どうも、はじめまして。

いつもご訪問ありがとうございます。

さて、この「サクリファイスの 夢見た世界」ですが、あまりにも深い内容で驚きました。

ユダは自分のことを狂っている、と言いましたが、彼は本当に狂っているわけではないと思います。

今の世の中、本人の意思なく人工呼吸器を付けられて生きている人がいます。こう言っては、失礼ですが、「果たしてそれが本人の望んでいることなのか?」と思います。

ユダは復讐でもあるけど、彼をこの世界から解き放つために人工呼吸器を外したのでしょう。

短い小説でしたが、内容は深く、色々と考えさせられました。

素晴らしい小説を書いていただき、ありがとうございます。

URL | イマ乃イノマ #WcxIsdyc
2012/11/28 17:02 | edit

イマ乃イノマ さん へ

 こんばんは 初めまして。
企画に提出することを 躊躇うような 薄暗い話を読んで頂き 其の上 感想まで 頂けるとは
有難う御座います。
いやぁーーーー あまりにも 何と言うかと言う様な 内容のため 感想を頂く事は
諦めていた話なので 嬉しいです。

僕は 狂っていると言う言葉は 何処か 自身を客観的に 冷たい視線で見ているような
突き放した感覚でしょうか。
世間から見れば 自身の話している言葉は 理解されないだろうし 自身の行動も
狂っていると評されるだろうと
実際に ユダは狂っているのか 其れとも 狂っていないのか… 其れは 読み方に拠って
どちらに取られても いいと思っています。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2012/11/28 18:46 | edit

こんばんは。

なんとなく思うことがあります。
もし自分が生の世界から退場しなくてはならなくなったとき。
自分を知っていた人に自分を忘れて欲しくないと思う気持ちが働く反面、自分という物一切を自分を知っていた人の心の中に残さないでおきたい。
そういう気持ちも強く働くのです。
もし退場が決まったらその瞬間から、いそいそと自分が生きていた証を1つずつ1つずつ丁寧に消去していく自分、それを想像してしまうのです。
すべてにおいて平凡な、大したトピックも無い、ある意味つまらない自分の人生、それらすべてを1から無かったことにしたい。
そういう風に思うんでしょうか?
そんなことを思い出してしまう深い深い作品でした。
考えさせられました。

URL | 山西 左紀 #0t8Ai07g
2012/12/08 23:38 | edit

山西 左紀 さん へ

 おはよう御座います。
まず 読んで頂いた上に 感想まで 有難う御座います。
とても 薄暗い話なので 感想を頂ける類とは思えないので とても嬉しいです。

まぁ 確かに 自分の退場が確定的で 不可避の状況となったら…
大概の方は 身辺整理を試みますよね。
自分が去った後の為に 其の行為は 残していく愛しい人の為か 自分の為か
パソコンの中のデーターを消す様に 自分を消して 次の人の為に 場所をつくる様に
自分の生きた痕跡を稀薄にする。

其処まで深刻でなくても 自分が 此のブログを止める時は 全てを消してしまうのか
残すのか… わからないですね。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2012/12/09 07:16 | edit

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