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百鬼夜行に遅刻しました

 オリジナルの小説を中心に 偶にゲーム 時々映画 稀にミステリー 膝には猫で お送りしたい所存です。

ワタリガラス異聞 - 迷蝶 5  

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ワタリガラス異聞 終わりです。
これで ワトスン君もイタリア美食漫遊記の方へ 帰ります。

興味のある方は 下記からどうぞ。
 


   ワタリガラス異聞 - 迷蝶


 其の 底知れぬ雰囲気を纏った青年が 言葉を口にする。

「其方の方に御礼を 手渡したいだけですよ。」
其の青年は 口の端を徐にゆがめ 他意はないと言外に表わす。

ハロルドは 否 探偵は出方を窺っているのか 無言で次の言葉を促す。
其の青年は 小さく溜息を吐き出し 諦めたように言葉を継ぎ足す。 
「カエレマシタよ。」

青年はオレの方へと視線を移し… 
小さな小さな掌程度の大きさの錦絵を オレの掌にソッとのせた。

「宝船の錦絵 枕の下に潜まし眠りに就くと 望むがままの夢を見る事ができますよ。
行きたい所 会いたい人… たった一度だけの夢。」

オレは 聞きたかった… 唯 知りたかった事を やっとの思いで口にする 
無様にも声音が裏返り 酸素を求める金魚の様に空回りを繰り返す。  
「白い少女は 帰れたのか 何処へ帰った。」

青年は 曖昧な微笑を浮かべ 答えてくれなかった。
唯 カエリタイ場所に カエッタと…

ハロルドが珍しく真摯な声音を吐きだして 青年を攻めたて出した。
「随分と悪趣味な… 残念ながら 私は此の類の趣向は好みに合いませんね。
此の馬鹿顔 呆けモノの下僕が行きたい所 会いたい人と言えば 如何様な結果を導き出すか…
些か考慮をして頂きたい。」

青年の表情がふっと緩む。
「その心配は必要ないかと
彼が選ばれ 貴方は選ばれなかった 解るでしょうか 彼は道標なのですよ。
ウツツとマボロシが混ざり 判別が付かなくなっても 彼はマボロイに取り込まれる事はない。

心からの御礼ですからね その様な心配は必要ないですよ。」

探偵は憮然と言葉を吐き捨てる。
「では 私の下僕を 私の断りもなく使った利用料金として 一つ教えろ。
お前は 何だ。」

「そうですね 私は 迷蝶亭が主 鵺。
迷い込んだ魂が 一時の休息を得る場所 白い人形は私ではカエス事が出来ない。
彼女と近しいモノなので…」
青年は 其の夜闇を纏ったような少女に 視線を落し微笑した様に…

消えていた 存在したのだろうか 其れとも やはり白昼夢だったのだろうか。

オレは 唯 唯 茫然と宝船の錦絵を見詰めていた。

埃っぽく ジメジメとして…
崩れ落ちそうに積まれたファイルの山々 
半分齧り放置され黴で覆われ 元が何であったのか 判別が付かないナニカ
酔狂なガラクタと 此の部屋には似つかわしくない 貯金箱のお気に入りの絵画が
雑然と同居していて…
そう 白昼夢から覚めると 何時もの 馴染み深い 色と匂いが広がっていた。
 


余りお勧めしませんね と 遠まわしに止めておけと言っているハロルドの言葉を思い出したが
オレは 嬉々として錦絵を枕の下に忍ばせる。

 ああっ 遂に 遂に 来る事が出来た。
 夢だけど…

 釣り人 垂涎の穴場 一人心のままに魚と戯れるんだ 夢だけど…

 おおっ 明るい茶色の… まだ子猫かな 可愛いな 頭撫でられて目を細めてる。
 和むな。

 海面が輝いて 魚が跳ねて 
 おやぁ 少年が二人 兄弟かな友達かな いいね楽しそうで。
 一人は 熱心に釣りに勤しんでいるのに もう一人は 海面を見ているだけ。
 何か耳打ちした 遠目にも解るほど 釣り竿を持っている方が落ち込んだ…
 何を 言ったのだろう。


 「にゃぁぁ。」

 何時の間に 足元に黒いシマシマ猫が… 綺麗な 薄い薄い青色の瞳… 此の色は ゾーラさんの色。
 「ごめんね まだ釣れてないんだ。」

 其の ゾーラさんの様な猫は 小首を傾げてオレの足元に座った。

 「にゃあ。」
 黒いシマシマ猫によく似た顔立ちの 茶色シマシマ猫が… 少し紫かかったような 濃い青色の瞳。
 出たな アルフレド。
 水を張っただけの空っぽのバケツを一瞥し 黒シマシマ猫の横で 悠然と伸びた。

 …… 
 気配がなかった 突然 後ろに黒い猫が座っていた。
 鈍色の 灰色がかった銀の瞳 あの少女なのか。

 そして 溜息を吐き出し 視線をあげると 其処には 白い白い猫が…
 鈍色の あの瞳が…

 頬に 暖かいモノが ポタリポタリとつたい落ちる。
 白い猫は 不思議そうに 其の雫を舐めとっていく。

 「カエレタノカ。」



 「馬鹿で 呆けモノの下僕君 君の感傷に付き合っていられる程 私は暇ではない。
 新鮮な魚のディナーを所望する。」

 えっ 此の声は…
 三毛猫が… 深い深い 緑色の瞳が 此の瞳の色は… オレに有給休暇をくれない雇用主。

 「にゃへへへへへへ……」
 チェシャ猫のトレードマークの様に 口唇を三日月のように歪めて まるで人の様に笑っている。

 何が 心からの御礼だよ オレは悪態の限りで 叫んでいた。


オレの白昼夢は 幕を閉じた そして 再び スパゲティーを茹で始める。
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category: ワタリガラス異聞 - 迷蝶

コメント

ありがとうございました!

思いつきのリクエストに素晴らしい大作を書いていただき、ありがとうございました。
ワトスン君の白昼夢だからこそ、人形は「カエリタイところにカエレタ」のですね。
和洋折衷が見事に混じりあうのが不思議かつ自然でした。また、ワタリガラスも読みたくなっちゃいました。

そして、「行きたい所 会いたい人 たった一度だけの望むがままの夢」なのに、やっぱり探偵と貯金箱を望んでしまうワトスン君。やっぱり、この職場は転職なのでしょうね。

この釣りの場面は、彩洋さんの作品ともリンクしていて、嬉しくなっちゃいますね。

イタリア美食紀行の続き、楽しみにしていますね。私も練らなきゃ。探偵、貯金箱、ワトスン君、ゾーラさん、アリアさん、お借りします。

URL | 八少女 夕 #9yMhI49k
2013/09/11 03:21 | edit

八少女 夕さん へ

 おはよう御座います。
うん ワトスン君はなんやかんや言いつつも 現実が好きなのですよね。
何処か幻に巻き込まれても 其の幻が心地よくても 現実に帰りたがる。
此れが 貯金箱や探偵では… 幻に住み着きかねない!!!!

いえいえ いい機会を与えて頂きました。
断片だけで放置状態の 迷蝶亭 其れに和風の方の二人組 少し形が出来てきました。
そして 楽しんで書けました!!!!
ワタリガラスシリーズと言いつつも ワタリガラスが出ないだけで 何と書き易い!!!
ワタリガラスが遅筆の元凶は お前だったのか ワタリガラス!!!!

いえいえ 本人は望んでない 転職してないと叫ぶでしょうね。

ああっ 楽しみに待っています。
探偵もどき 全員出すのが難しければ 一人でも数人でもいいので 好きに使って下さい。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2013/09/11 06:44 | edit

スパゲッティを茹でるところで終わるのが日常に戻った印象を与えて凄くよかったです。「かえる」ということは非常に大事ですね。

URL | LandM #-
2013/09/11 06:45 | edit

選ばれなかった探偵の悔しそうな顔が、ちょっと浮かんで笑えました。
彼だったら、どんな場所へ行ったのでしょうか。

心からのお礼 ・・・で、まず願ったのが釣りだとは。
やっぱりのんびりしたかったのですね、気の毒に。w

お?この猫たちは・・・。
やっぱりあの場所。
頭を撫でられてるのは マコトかな^^
少年たちは・・・。何してるんでしょう。気になる!!
ちゃんとそんな描写を入れてくれるところが、にくいです♪

しかしやっぱり、性分ですね。
まだ白昼夢の途中なのに。
もっとのんびりすればいいのに(笑)

帰るべき場所って、やっぱり決まってるんですね^^;

URL | lime #GCA3nAmE
2013/09/11 07:44 | edit

LandMさん へ

 こんにちは。
そうですね 此の話 ワトスン君がスパゲティーを茹でている処から始まっていますからね。
くるりと一周して 元にかえった感じでしょうか。

此れで ワトスンの非日常 一寸した冒険は終わりと強調したかったので 何時もしている料理を最後に持ってきました。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2013/09/11 14:21 | edit

lime さん へ

 こんにちは。
うーーん 探偵の行きたい場所 会いたい人って… 難しいですね。
貯金箱は 何となく書けるのですが 探偵は…
結構 現状で好き勝手しているので 特別な場所って難しいです。

ええ ワトスン君 隙あらば釣りに行きたい マス釣り祭りだと言っていますが 今だ 現実していないですからね…
せめて夢でも と 気の毒な輩ですよ。

そうです あの場所です。
一人でのんびり魚と戯れる と言いつつ 一人では寂しくなってしまう…
まぁ 待ってくれている人がいる 必要としてくれる人がいる いいんじゃないでしょうか。
ワトスン君 モテモテだねーーー と言う事で!!!!!

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2013/09/11 14:30 | edit

う~ん、実にええ感じの終わりでしたな。
ワトスン君がホンマええキャラしてました。

そして、帰っていくんですね・・・・・・。

URL | シュナイダー #-
2013/09/11 20:51 | edit

ねこさんたち

さすがウゾさん。それぞれ上手く役割を当てはめてくださいましたね!
というよりも、せっかく(夢だけど)楽しいひと時を過ごせるという時にも、ワトスンくんは結局あの人たちを夢の中に登場させてしまうのでうすね(*^_^*)
なんだかんだと言いつつも、ワトスンくんはみんなに毒されているみんなを愛しているんですね。
そう、現状が結構幸せなんですよね。
カエリタイ場所は結局、やっぱり身近な場所だったのかも。
「にゃへへへへへへ……」が何とも言えません。
新鮮な魚のディナー!
私も所望します。マコトも今頃、タケルのねこまんま、美味しく食べていることでしょう(^^)

URL | 大海彩洋 #nLQskDKw
2013/09/11 21:02 | edit

シュナイダー さん へ

 こんばんは。
ワトスン君は なんやかんや言いつつも 皆から愛され いじられている人物ですからね。
そして 結構図太く めげないし 環境に馴染むし…
でも 女性には 全くもてる気配すらないと言う むさ苦しいキャラですね。

うん 皆 帰っていきます 待っていてくれる人がいるって いいですよ。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2013/09/11 21:12 | edit

大海彩洋さん へ

 こんばんは。
うん 初めから 宝船の錦絵を貰って 夢で釣りに行くと言うオチは決めていたので…
其処に 猫達をプラスしただけですけどね。

うん ワトスン君のカエル場所は 事務所のキッチンでスパゲティーを酔茹でる…
結局は カエル場所って 人がいて初めて成り立つ様な感じですね。
ワトスン君のカエル場所は 探偵や貯金箱がいる事務所で… 夢で憧れの釣り場所に行っても 結局 こやつらを出してしまう…
空っぽの事務所では 駄目なのですよね。

探偵はね 猫の姿をしていても しれっと人の言葉喋りそうですからね。ワトスン君の受難は 本編のイタリア美食漫遊記に続きます!!!!

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2013/09/11 21:23 | edit

読み終えて、久しぶりに釣りがしたくなりました。
気候もだんだんよくなってきたし、釣り糸垂れるのもよさそうです。
さて頑張って獲物をゲットしたとして、
うちのあの三毛猫さんは喜んでくれるでしょうか。
たぶんいつものように、知らん振りなんでしょうね。

URL | NYANKO君 #5p4vzfrw
2013/09/11 21:26 | edit

拍手コメント頂いた方 へ

 こんばんは。
いえいえ 書いている僕自身が 一番 恥ずかしいと言うかぁーーー
稚拙なモノを書き散らしていますから… 偶に 我に返ると 凄く恥ずかしくなってます。

確かに 少年の兄弟とか 猫達とか 僕の周囲 其の儘ですね。
うん ワトスン君のように 猫に取り巻かれたいと思っていたり… 傍で 見知らぬ猫達が寛いでくれる。
憧れますね。

拍手コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2013/09/11 21:29 | edit

NYANKO君さん へ

 こんばんは。
そうですよねーーー きなこさんは チョイチョイとした後は… 放置しそうですよね。
うーーん 魚を食べている きなこさん想像できない。
食卓の魚も 興味なしですからね…

うん 気候のいい時に のんびりと釣り糸を垂れるのも いいですね。
近所には 小魚の住む池があったのですが… 最近はすっかり 亀池になってしまっている。
昔は いい釣り場所だったのになぁ…

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2013/09/11 21:35 | edit

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