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百鬼夜行に遅刻しました

 オリジナルの小説を中心に 偶にゲーム 時々映画 稀にミステリー 膝には猫で お送りしたい所存です。

美しい世界 美しい時代  

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尋青年の話 最終回です。

興味のある方は 下記からどうぞ。



    美しい世界 美しい時代

 「帰ります。」
オレは 日本訪問当初から 何くれと無く世話を焼いてくれた同世代の男性に告げた。

優しさからだろうか 朝食のメニューがオムレツからベーコンに変わった程度の驚きを持って受け止めてくれた。
「そうか…」と

淡々と事務処理をおこない 手続きを滞りなく…
「悪い 次のアメリカ行きは最速で一週間後だわ この便を逃すと一か月後になる。
如何する 一週間後の便を予約していいか。」

「お願いします。」

オレは いいのか悪いのか… 強制的に一週間の猶予を与えられ 本当の異邦人となった。

此の 不自然に陽気な世話役が ばつが悪そうに言葉を切り出し 念を押す。
「もう 此れで会う事はないだろうね。
知っているとは思うが どんな選択をしても 絶対に後悔はする 其れは仕方の無い事だからな。」
オレは 此の男が突然にこのような話を切り出すのか 唐突過ぎて返答に困って無言で…

「悪い… オレの英語 鎖国している国の人間が喋るにしては上手すぎると思わないかったか そう言う事だ。
オレはお前が選択しなかった方向を選択した者だよ。
監視役でも世話役でもなく 唯… 心配だった。」

「ありがとう。」
唯 唯 オレは笑うしかなかった。
 

一週間 オレは再び父に会う事もなく 此の世話役の男性とも会う事なく 
既に花の季節を終え 黄緑色の薄く 陽に透けてひかる新緑を見上げる。

オレは最後の夜を 場末の映画館で過ごす。
疎らな観客 映写機のカタカタと回る音 紗が掛ったかのようなぼやけた画像…

「ボニー アンド クライド 俺たちに明日はない」 何となく オレの気分に似つかわしくて 
赤いビロード張りの椅子に沈んだ。
クライマックスでは 犯罪者でありヒーローである二人は 雨の様に弾薬を浴び ボロボロに撃ち抜かれる。
不思議な事に 犯罪者を撃ち抜いた筈の警察官達は… 歓声を上げるどころか 暗い沈んだ表情で 無言で
まるで 子供が自分たちのヒーローを殺してしまったかのような表情をしている。

疎らな観客は 長いクレジットタイトルの途中で席を立ったのか 電気がつけられた時にはすでに誰もいない。
オレは… 子供がするように指先で銃の形を作り スクーリンを撃ち抜く。

「ヴァーーン。」

そして アメリカから態々持ってきた 二つのグローブと一つのボールを映画館ロービーのごみ箱へ投げ捨てる。

オレは父の国を捨てるのでも 母の国へ帰るのでもない 唯 オレの国に帰る 
長い長い回り道をして辿り着いた 凄く単純な答え。


飛行機の窓から見える日本は とてもとても美しい 深く静かに咲き誇る花だった。 

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category: 美しい世界 美しい時代

コメント

尋青年と同年代の世話役の人、尋青年のもう一面を暗示しているようにも見えます。
だから、尋青年は日本を離れるけど、結局は、日本の事、父親の事を心にとどめてし
まうという、そんな感じもします。
これから、さらに年を取って行き、母親への同情の念も、父親への猜疑心もだんだん
変わって行くんだろうなあという気もします。
若い尋青年は、自分のルーツを求めていたような所もあったのでしょうが、そんな事は
人生の一部分にすぎない、これからは、自分で人生を切り開いて行くんだ、という
そんな風に感じました。
よくワカンナイけど・・・。

URL | ペチュニア #-
2014/04/29 08:49 | edit

そうかぁ

選ぶところで終わるのか、選ばないまま終わるのか、どっちなんだろうと思っていたのです。でも、ウゾさんはやっぱり選択させましたね。
そう、もしも選ぶなら、アメリカに帰るんだろうなと思ってはいたけれど、その意味付けはどういう形になるのか、興味がありました。
そう、きっと尋くんにとっては、アメリカが母の国、日本が父の国、というのでもなくて、今まで自分がいた場所が自分の国という位置づけだったのですね。
この「どんな選択をしても 絶対に後悔はする 其れは仕方の無い事だからな」がじんと来ました。裏返せば、「どんな選択をしても 満足することもできる」……そのようにも読める言葉でした。
映画と心模様のリンクも、なんだか本当に古い映画のワンシーンのようでした。
素敵な物語、読ませていただき、ありがとうございました(*^_^*)

URL | 大海彩洋 #nLQskDKw
2014/04/29 15:17 | edit

ペチュニア さん へ

 こんばんは。
そうですね 世話役の青年は尋青年の 選ばなかった方を選んだのですよ。
うん おそらく もう二度と日本を訪れる事はないが ゆっくりと時間をかけて 尋青年にとって日本を訪れた意味が熟成されていくのかな。
年をとり 尋青年が父となった時に 桜の下で父とキャッチボールをした事が… 其の時の父が何を思っていたのかに考えが及ぶかな。
そう 今の尋青年は まだまだ青くて堅苦しい考えしか持てないのですか 今まで流されていた人物が 自分で考えて選択をした。
そーゆー感じですかね。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。  

URL | ウゾ #-
2014/04/29 18:18 | edit

大海彩洋さん へ

 こんばんは。
うん 殆どの方が尋青年はアメリカに帰るとおもっていたでしょうね…
日本に残るパターンも考えてみたのですが… どうしても不自然になってしまって 予想通り アメリカに帰りました。
うん 尋青年の選択の物語ですからね 曖昧にしてしまうと駄目かなぁと…

自分の今までいた国と言うよりも 自分の中の文化ですね。
夢で 砂漠 一神教の地から 森 多神教の地へ行くのですが…
此れって アメリカから日本なのですよ。
そこで アメリカの文化の象徴である銃を手に持っていて… でも 森では銃は無用の長物になってしまう。
もっと役に立つモノに 銃を作り変えたらどうだと言う言葉に 反感を覚えて 無意識に手を振り払ってしまう。
尋青年は 自分はアメリカ人で アメリカの文化に生きていると悟るのですよ。

うん 初めから 最後のシーンは 俺たちに明日はないを見ると決めていたのすよ。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/04/29 18:28 | edit

「どんな選択をしても 絶対に後悔はする」という台詞がとても印象的です。
以前、「後悔することがあっても、それを『時間を遡ってやり直したい』と思ったりすることはない。自分は良い思いをしなかった経験でも、結果的には成長に繋がる」というような話を聞いたことをふと思い出しました。
尋青年はアメリカに帰ることになりましたが、日本に訪れた経験はいずれ彼の成長に繋がっていくのかなぁ、と思ったり。

URL | 日出瀬菜 #-
2014/04/29 20:56 | edit

18:56に拍手コメント頂いた方 へ

 こんばんは。
飛行機がふわっと飛び立ち たちまち見えなくなっていく日本。
その一瞬は とっても綺麗だと思うのですよ。
尋青年にとっては もう二度と見る事のない光景で…
色々な思いと共に 瞳と記憶に刻み付けたのかなぁ。

拍手コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/04/29 21:20 | edit

日出瀬菜さん へ

 こんばんは。
そうですね 此の世話役の青年も おそらく自分の選択を色々と悔いた事があったのでしょうね。
それ故の言葉であり 同じような立場であったから 自分の心情を漏らしてしまったのでしょうね。

うん アメリカにいた頃の尋青年は 深く考えた事がなく まだまだ青くて 狭い視野しかなくて…
でも 初めて自分で日本に行こうと決めて 自分で考え行動した。
アメリカに其の儘いて 決めたのではなく 自分の目で日本を見た 将来 後悔する事があっても 其の時に自分を受け入れる事が出来る様なナニカを持っているかな。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/04/29 21:29 | edit

DNAのしがらみに絡め取られているように感じていた尋君ですが、
最後には自分の身一つで行く先を考えたように思えました。
そうして改めて冷静になって、自分の中にある血を感じるんでしょうね。

生きていくという事は、後悔をし続けることでもあるのかも。
それが分かっていたら、もう踏みとどまって悩むことは無いのかもしれませんね。
尋君が、自分の国を見つけられたことと、日本を美しい国だと思えたことが、とても嬉しく思えるラストでした。

URL | lime #GCA3nAmE
2014/04/29 21:32 | edit

lime さん へ

 こんばんは。
うん… 遺伝子という呪縛に縛られて… 白か黒のように極端で 灰色と言った考えがなかったのですよね。
そう やっと 母が毎年贈っていたグローブを捨てる事ができたのですよね。
母の為に生きていた尋青年が 自分の為に生きる事を決めた。
おそらく… 真剣に好きな人が出来た時か 父になった時か…
自分の父に自分を重ねて 改めて遺伝子を感じて 感慨深いでしょうね。

後悔するって事は… 真剣に考えるからですからね 何も考えてなければ後悔もなにも…
尋青年には 日本を訪れた事は大きな経験になった筈!!!!

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/04/29 22:02 | edit

どんな選択肢を選んでも後悔するか。。。
私はどんなものになっても後悔しないことに最近はしてますからね。
まあ、後悔して人生を修正するわけですから。
それはとても大切なことですね。
この作品も読みごたえがあって、とても良かったです。
お疲れ様でした。
(*^-^*)

URL | LandM #-
2014/04/29 23:47 | edit

こんばんは

父のでもなく、母のでもなく、自分の人生を生きる、これを決心するための旅だったのでしょうね。

もう一人の青年が選ばなかったものについて後悔しないまでも生涯想うように、尋青年も もう二度と見ることのできない日本の原風景を想い続けるのでしょう。そのかわりに、選んだ世界をずっと持ち続けられるのですよね。

アメリカでの彼の人生に幸あれ。

URL | 八少女 夕 #9yMhI49k
2014/04/30 04:21 | edit

LandMさん へ

 こんにちは。
後悔とまでいかなくても もしもう一方を選択していたら と考えがちですからね。
其れは どんな選択をしても付き纏ってしまうから…
後悔しないか… 中々そーゆー考えまでいけないですからね。

うん 読んで頂いて ありがとうね。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/04/30 17:09 | edit

八少女 夕さん へ

 こんばんは。
母の思いでも 父の考えでもない 自分はどうしたいのかと 自分を見詰める為の時間でしょうか。

そうですねーー もう一方の青年は日本を選択して生きていく 尋君は自分の中にある文化がアメリカだと悟り アメリカを自分の国とした。
うん きっと… 父とした短い会話を 偶に思い出し 桜の花を思い出し 年を取っていくのでしょうね。
一つ 吹っ切れたのでしょうね。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/04/30 17:15 | edit

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