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百鬼夜行に遅刻しました

 オリジナルの小説を中心に 偶にゲーム 時々映画 稀にミステリー 膝には猫で お送りしたい所存です。

薔薇色の陶器  

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ああっーーー 何となく… 
ある方の 陶器の記事に刺激されて 一本書いてしまいました。

ひょっとすると… 色の断片シリーズとして 新しいカテゴリ作ろうかなとも思っています。

興味のある方は 下記からどうぞ。







   薔薇色の陶器

 鬱蒼と茂る巨樹に囲まれた 薄暗い 昼でも日射しが遮られたかのような 小さな集落で 私は生まれた。
此の集落の外は 鬱蒼と茂る巨樹の海が広がり ぼんやりと死の世界だと思っていた。

そう… 確かにこの集落にも 医者の代わりをする者はいたが 薬草の知識に長けた呪術師と言った感じで…
本当に 生命にかかわる様な病に罹った者は 此の集落から連れ去られ そして 帰ってこなかった。
だから 此の集落の外は死の世界だと信じていた。

では まったく 外との交流がなかったのかと言う訳ではない。
一年か 二年に一度程度 とても珍しいモノと情報を持って現れる行商人の男がいた。
不思議な雰囲気を纏った黒い外套の男は 鬱蒼と深い巨樹に囲まれている為 容易には辿り着けない筈の此の集落に
恰も 鳥が舞い降りるかのように 何時の間にか気が付くと 其処にいた。

私は 此の男が持ってくる 色取り取りのキラキラと光る甘い甘い菓子を楽しみにしていた。
此の薄暗い集落では 見る事の出来ない鮮やかで眩しい色。
そう 長い長い雨の季節が過ぎた頃に 何時も通り 何気なく 其の行商人の男は現れた。

大人たちは こぞって 男を取り囲み 珍しい品を吟味し情報を得ていた。
私は… 大人たちが 粗方はけた後に 暇々な時間に作った革細工の小物や小さな彫刻 綺麗な石を持っていって
甘い菓子と交換してもらおうとしていた。
そう 此の集落は孤立している為 貨幣も意味のないモノでしかなく 物品の交換が一般的だった。
また 此の行商人も この集落で得た品を 他の地で売っていたのか 快く 物品の交換に応じてくれた。

私は… 薔薇色の陶器に魅せられた。
見た事もない花が描かれた 一つの茶碗 薄く紙の様な儚さ 眩しいまでの金色が複雑な文様を描く。
私は そっと指先を伸ばし じっと見詰める。
此の時 私は確かに 巨樹の海の外を感じた 
そして 私は 自身の欲望に驚く 欲しいと 自分のモノにしたいと言う衝動に突き動かされる。
甘い菓子を すべて諦めたら 手に入るだろうか 一番大切にしている 一番綺麗な石とならば交換できるだろうか…
私は 恐る恐る 行商人に其の薔薇色の陶器が欲しいと切り出した。

行商人の男は 無造作に薔薇色の陶器を手に取り 私の前に置いた。
 
 … 本当に欲しいのかい では あげるよ。

私は 流石に無料で貰う事は出来ないと 一番綺麗な石を差し出そうとしたのだが…

 … 此の茶碗は少し色むらがあってね 其れでも お嬢ちゃんが差し出すモノでは交換できない程 高価な品だ。
   だから あげるよ。

私は 甘い甘いキラキラの菓子と薔薇色の茶碗を 両の掌で包み込み 行商人が立ち去る後ろ姿を見送っていた。

そうして また長い長い雨の季節が過ぎ去り 今年は行商人の男は来るだろうかと 待ち侘びていた頃の事だ。
私は腹痛に襲われ 集落の医師の処方する薬草を飲み… 一向に収まる気配のない 刺し込むような痛み。
徐々に体力を奪う高熱 何も吐くモノなぞないのに収まらない吐き気。

集落の医師が 遂に手におえないと判断したのか 医師は巨樹の外から巨大な鳥を呼んだ。
けたたましい音をたて 私は巨大な鳥に飲み込まれる。
私は死んでしまうのならば せめて大好きなお茶碗と共にと 高熱で朦朧となりながらも 両の手でお茶碗を抱えた。

私は 眠り そして 起きた時にはすっかり元気になっていた。
白い服を着た人物が 私の体の悪い部分を取ってしまったから すぐに元気になれるよと説明してくれた。

私は死ななかった 巨樹の外に出たのに死ななかった。
いや… 死んだのだろうか…

日々の生活が暇だと感じるほどに体力が戻った頃 一つの事実を告げられる。
私は あの集落へは もう帰れないと…

あの集落では 巨樹の海へ出てしまった者は死者と見做されてしまう 
其の為 集落から出た者が帰って来ても 穢れた者と見做されて… まっとうな人生を送る事が難しい。

そう 誰も帰ってこなかった 外に出た者は誰も…

… 突然の事で 如何したらいいのか解らないと思うが ゆっくりでいい 出来れば前向きに此れからを
  考えて欲しい。


私は 鈍い光を放つ乳白色の上に 透明で儚げな色で薔薇色の花弁を描き上げる。
爽やかな風が吹き抜ける様な空 匂い立つ様な花束。

私は いや 私も集落に帰る事はなく 少数民族保護法という法律の恩恵により都市で生活基盤を得た。
そして 陶芸の絵付け職人を養成する為の学校に通っている。
私は 此の薔薇色の陶器を描く為に 集落から出たのかもしれないと思うようになっていた。
あの不思議な雰囲気を纏った行商人は知っていたのではと 何故か思えてしまう。


 
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category: 色とモノ

コメント

とても良いお話でした♡
きっと、この女の子は「神に選ばれた才能」を持っていたかもしれませんね。
陶磁器の絵付けを天職にすべし・・っていう「運命」を背負っていたのかも・・。
外と遮断された世界に生きていてもね、そういう人って居ると思うんです。
神がその才能を惜しんで、彼女に「出会い」と「解放」を与えたんだと思います。
彼女の絵は時代を超えて人々を感動させるのだ。。という暗示もありますね。

昔の絵付け師も、こんな風な運命によって優れた絵付け師になった人も居ると思います。
才能が深い人はね、どのような環境に居ても、神様が放っておかないみたいなね・・。

URL | ペチュニア #-
2014/05/03 07:44 | edit

ペチュニアさん へ

 こんばんは。
うん 時代の柵も 国の柵も… どんな不利益があっても 天才と言われる類はでてくると 以前先生が言っていました。
おそらく 運をも引き寄せるのかなぁ…

彼女は きっと 陶器に薔薇色の花を描く時 胸が張り裂けそうなほどの喜びを感じているでしょうね。
そう きっと彼女の描く 薔薇色の陶器は また誰かを感動させ 新しい運命へと導いているのかもと思いますね。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/05/03 18:53 | edit

昔のお話かと思いました

 こんにちは。
 現代を舞台にしていたのですね。
 私は途中まで「桃花源」の物語の様な昔々の幻の村の物語かと思いました。でも帰れない村であるならもう幻と同じなのかもしれません。そこに陶器がからんで「桃花片」と言う物語を思い出しました。娘は何時か名人と言われるようになるのでしょう。そして大成した後、この陶器をくれた行商人の心を知るのかも知れません。

URL | miss.key #eRuZ.D2c
2014/05/03 19:51 | edit

幻想的な話ですね。
行った先が幻だったのか、あるいはもともといた場所が幻だったのか。
織田信長の夢幻の如くではありませんが。
それでもそうしたものを彷彿とさせる小説ですね。

URL | LandM #-
2014/05/03 20:15 | edit

こんばんは

「本当に欲しいのかい では あげるよ」って言葉に答えた時に、彼女の運命は定まったのかもしれませんね。

もう二度と戻れない故郷を見つめ続けるのではなくて、その運命に向かって前向きに進む彼女と、薔薇色とが重なって、心地よい読後感です。

続くのが楽しみです。

URL | 八少女 夕 #9yMhI49k
2014/05/04 03:14 | edit

miss.key さん へ

 おはよう御座います。
そうですねーー 昔の話っぽい感じしますよね。
初めは もっと時代的に昔にしようと思ったのですが…
其れでは主人公の女の子が 一人都会にでてきても救う事が難しい。
現代だから法律の保護と 男女平等に学問の機会とが用意できるが 昔ではどうなっている事かと
そうですねーー 行商人 何を考え 高価な品を与えたのか…不思議な人物です。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/05/04 07:18 | edit

LandMさん へ

 おはよう御座います。
確かにーー 巨樹の外から訪れた者にとっては 此の小さな集落は きっと幻想でしようね。
行き着く事が難しく そして 此の集落の者は集落の外にでてこない。
ほんとうにあるのか 疑わしい集落。
少女にとっても 巨樹の外にでてしまったら 今までいた筈の集落なのに 幻になってしまうのかな。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/05/04 07:25 | edit

八少女 夕さん へ

 こんばんは。
うん 紙のように薄くて 金で複雑な文様が描かれている 実用性皆無の茶碗なんですよね。
そーゆーモノの美しさに驚き キラキラの菓子をあきらめる。
此の少女は 此の時既に 巨樹の外を感じ惹かれている。

此の少女の話は ここで終わりかな。
色シリーズとして 幾つかの色で この話のように物と色の断片的な掌編書こうかなぁと…
後できているのは 赤色で「赤色恐怖症」これはほのぼの系です。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/05/04 07:36 | edit

19:33に拍手コメント頂いた方 へ

 おはよう御座います。
うん 集落の人々は巨樹の外に 広い世界があると知らなくて 松落の中だけが生活出来る処なのですよね。
集落の医師とほんの数名だけが 巨樹の外に世界がある事 巨樹の外の世界は死ではないと知っている。
うん 行商人の持っていた陶器は 実用性皆無なのですよね。
そーゆーモノを欲しがるって事に 行商人は何かを感じたのかなぁ。
レンゲ ブログを訪問していても レンゲの写真を載せているブログ見かけなくて 載せてみました。

拍手コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/05/04 07:47 | edit

ただいまです^^

とても素敵な掌握ですね。ウゾさんにしか書けない、しゃらりと光る幻想世界。
でも、甘くない、ある意味厳しい現実感もありますね。
実は管理されながら存在している未知と無知の世界。
そこで、選ばれた様に、外で生きていく力と目標を与えられた少女。描かれていない、彼女の未来を想像する余韻を持たせたところが、いいですね。
この短い中に、こんなにもあっさりとドラマを閉じ込めてしまうウゾさん。やっぱりすごいと思うのです。

URL | lime #GCA3nAmE
2014/05/06 01:46 | edit

limeさんに続いて

ただいまです(^^)
本当は津軽でタブレットで拝読したものの、タブレットで文字を打つのって苦痛で……やっとコメントを書きに来ました。
これ、好きな世界です。少し異界の話にも思えるけれど、実は現在のこの世界でもあり得るような、そんなふうに感じられました。
ペチュニアさんちの素敵なお写真から湧き出た物語なのでしょうか。
職人が丹精を込めて、花や蝶の世界に入り込んで描く陶器の中の世界。それが彼女にとっての現実になったのですね。
この行商人は、物自体の値段よりも魂の値段を感じる人だったのかなぁ。

URL | 大海彩洋 #nLQskDKw
2014/05/06 07:23 | edit

limeさん へ

 お帰りなさいーーー

うん 巨樹に囲まれた集落って自体で どうやって暮らしているんだ!!!
集落の医者はどの様な手段で 外の世界と連絡を取ったんだ。
言葉は共通なのか!!!! とか… 突っ込み処満載ですが 全て華麗にスルーして書きました。

うん これから彼女はどの様に生きていくのか 色々と想像できますが 薔薇色の陶器と共に生きて行こうとするでしょうね。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/05/06 08:16 | edit

大海彩洋さん へ

 お帰りなさいーーー
うんうん あの類はなれていないと 文字打つの苦痛ですよね。
偶に 凄いスピードで携帯電話のメール打つ方見ますが… あれは どれほど練習すれば あのスピードになるのか…

うん 世界観的には古そうなのですが あまりに過去の話にしてしまうと 少女が集落から引き離されて生きていけない状態になってしまう。
せいぜい 何処かの使用人見習いになる程度で…
少女を 奇跡とか幸運とかではなく救うためには ある程度現在になってしまいました。

うーーん いまいち 何処のブログで見たのか… ペチュニアさんのブログでよかったのか…
何処かで 濃いめの薔薇色のお茶碗の写真が載せられていたのですよ。うーーん 何処だったかなぁ。

この行商人は 此の少女に賭けてみたって感じでしょうか。
実用性皆無のお茶碗を欲しがり… 此の少女はひょっとして…
この薔薇色の陶器を与える事に拠って 同じ様に人に感動を与える様なモノを作り出すかもと…
此の行商人は 将来この少女が作り出すであろうモノを感じたのかなぁ。

コメント有難う御座いました とても嬉しいです。

URL | ウゾ #-
2014/05/06 08:31 | edit

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